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木の好きな娘「モルネ」

小川透さん(神奈川県)/木のある暮らしとわたし

我が家の娘の体験記を紹介したい。小学校6年になる。愛称を「モルネ」と言い、本当は地球外生命体なのだそうだ。・・・まあ、それは置くとして、いろいろと活動的である。通常、家にいる時は靴下をはかない。真冬でも履かない。理由を聞くと「だって木の感触がイイんだもん」とのことだ。子供の部屋には信州カラマツを床に使った、その浮造りの感触と、でっかい節が気に入っているらしい。

他にもあるぞ、鬼グルミの洗面所・栓のリビング・栗の勉強部屋・・・でもやっぱりカラマツが一番のようだ。きっと彼女の「木」に関する記憶データには、「節・木目・香り・ゴツゴツとした感触・ぬくもり」が入力されているに違いない。

先日のこと、学校で雨に降られたモルネは、友人から傘を借りて帰った。家内が玄関に開いて、一晩干して返した。すると友人に「あれ~この傘、木の匂いがする」と言われたそうな。住人はもう何も感じなくなってしまったが、玄関先に来客があると「木の匂いがしますね」とよく言われると家内が言っていた。

そう言えばこんな事もあった。隣で建売住宅が売り出された時の事。「新築オープンハウス」のノボリを見つけて、家内とモルネは、鵜の目鷹の目で早速見に行ったのだ。程なく、不動産屋と長話に興じる家内を置いて、モルネが息を切らせて戻ってきた「おとうさん!大変だ、隣のうち合成樹脂で出来ている!!」う~ん名言。床もドアも壁も、みーんなツルツルでピカピカだったそうだ。「その方が安くて簡単に作れるんじゃない?」と回答してみたが納得いかない様子。「あのねー、もっと杉とか使わなきゃいけないんだよ」「えっ?」、「学校で習ったんだからねっ!」モルネはだんだん怒りだした。「間伐材とかってあるでしょう、アレ使わないと森がひどい事になってるんだからね。先生が言ってたよ」。偉い先生です。我々の頃とは違い、今では授業で間伐や森林再生が、きっちり採り上げられる時代になりました。「ウチはちゃんと使ってますよ、モルネが遊ぶ屋根裏部屋は、檜の間伐材で作った台形フロアだし、リビングに立ってる杉丸太も間伐材なんだよ」漸く納得して、カラマツの階段を踏みしめて引き上げていった。

それにしても、子供の頃の記憶と言うのは、将来、家を創る段になって重要な要素になるのではないか。合成樹脂の家に育った子供の記憶には、一体何が残るのか・・・。モルネがずぅーと遠い将来、地球の男性と結ばれ、家を創る時には「木」の記憶データファイルを開けてみて欲しい。