木造建築が実現可能な規模は?
▶ 公共施設等の木材利用推進マニュアル(改訂版/平成13年3月)
Q8:木造建築が実現可能な規模は?
木造建築が実現可能な規模は?
木造建築物の規模の制限は、用途や地域により法的に規定されています。詳しくは、以下の通りです。
a. 建築物の用途と規模b. 構造計算の流れ
a. 建築物の用途と規模
Q7でも紹介しましたが、防火上の規定により、病院や大勢の人が集まる施設など、火災時の避難に問題が生じる施設においては、その用途に応じての制限があります。また、構造的には、規模に合った構造計算方法を行うことが求められています。
防火上特に配慮が必要な用途に供する建築物を特殊建築物といい、その用途と先に述べた防火・準防火地域を組み合わせで建築可能規模が決まってきます。規模のうち延べ床面積について、表3に特殊建築物の一覧表を、表4に住宅の場合の一覧表を示します。
表3 木造特殊建築物の建築可能範囲
(×:木造建築不可 ◎:準耐火木造建築 ○:準耐火以外の木造建築)
延べ面積(m2) | 100 | 150 | 200 | 300 | 500 | 1500 | 2000 | 3000 | ||
劇場・映画館・演芸場(主階が1階にあるものに限る。延べ床面積は客席部分に適用) | 防火地域 | ◎ | × | |||||||
準防火地域 | ○ | × | ||||||||
上記以外 | ○ | × | ||||||||
観覧場・公会堂・集会場(延べ床面積は客席部分に適用) | 防火地域 | ◎ | × | |||||||
準防火地域 | ○ | × | ||||||||
上記以外 | ○ | × | ||||||||
病院・診療所(患者の収容施設のあるもの)・ホテル・旅館・養老院・児童福祉施設等 | 防火地域 | ◎ | × | |||||||
準防火地域 | ○ | ◎ | × | |||||||
上記以外 | ○ | ◎ | × | |||||||
下宿・共同住宅・寄宿舎 | 防火地域 | ◎ | × | |||||||
準防火地域 | ○ | ◎ | × | |||||||
上記以外 | ○ | ◎ | × | |||||||
学校・体育館・博物館・美術館・図書館・その他スポーツ施設等 | 防火地域 | ◎ | × | |||||||
準防火地域 | ○ | ◎ | × | |||||||
上記以外 | ○ | ◎ | × | |||||||
百貨店・マーケット・展示場・キャバレー・カフェー・ナイトクラブ・バー等 | 防火地域 | ◎ | × | |||||||
準防火地域 | ○ | ◎ | × | |||||||
上記以外 | ○ | ◎ | × | |||||||
倉庫等 | 防火地域 | ◎ | × | |||||||
準防火地域 | ○ | ◎ | × | |||||||
上記以外 | ○ | ◎ | × | |||||||
自動車車庫・自動車修理工場等 | 防火地域 | ◎ | × | |||||||
準防火地域 | ○ | ◎ | × | |||||||
上記以外 | ○ | ◎ | × | |||||||
一定量異常の危険物の貯蔵堤または処理揚 | 防火地域 | ◎ | × | |||||||
準防火地域 | ◎ | × | ||||||||
上記以外 | ◎ | × |
表4 木造住宅等の建築可能範囲
(×:木造建築不可 ◎:準耐火木造建築 ○:準耐火以外の木造建築)
延べ面積(m2) | 100 | 150 | 200 | 300 | 500 | 1500 | 2000 | 3000 | ||
木造3階建て共同住宅等 | 防火地域 | × | ||||||||
準防火地域 | ◎ | × | ||||||||
上記以外 | ◎ | × | ||||||||
木造2階建て共同住宅等 | 防火地域 | ◎ | × | |||||||
準防火地域 | ○ | ◎ | × | |||||||
上記以外 | ○ | ◎ | × | |||||||
木造3階・戸建住宅 | 防火地域 | × | ||||||||
準防火地域 | ○ | ◎ | × | |||||||
上記以外 | ◎ | × | ||||||||
木造2階・戸建住宅 | 防火地域 | ◎ | × | |||||||
準防火地域 | ○ | ◎ | × | |||||||
上記以外 | ◎ | × |
どの特殊建築物についても3,000m2が限界となっていますが、表3の病院の欄以下の用途を供するもので、防火・準防火地域以外に建つものについては、500m2毎に防火区画を行う等の措置を行えば、3,000m2を超えることが可能となります。この緩和措置については、平成6年国土交通省告示第1059を参照して下さい。
高さの制限については、特殊建築物については、基本的に2階建てまでとなっています。それ以上の階を有するものは、耐火建築物とする必要が生じるので木造建築は不可能となります。例外としては、下宿、共同住宅、寄宿舎の用途に供するもので、これらについては、表4にあるように、3階建てまで可能です。また、倉庫では3階以上の部分の面積の合計が200m2未満であれば、3階建て以上も可能です。
b. 構造計算の流れ
木造建築の構造計算は構法、規模によりいくつかのルートがあります。大きな分かれ目は、高さが13mまたは軒高さが9mを超えるもの、3階建て以上、延べ床面積が500m2を超えるものになります(図12)。
図12 建物の構法・規模による構造計算ルート
(グラフをクリックすると拡大した画像がご覧になれます。)