木材利用相談Q&A 100
住宅 - 居住性に関する利用相談
Q70 | 住宅室内での揮発性有機化合物(VOC)に関心が高まっています。なかでも木質建材からのホルムアルデヒドが大きな問題になっていますが、どういうことですか? | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
最近の住宅では合板、繊維板などの利用はごく一般的ですが、これらの接着剤として、安価で耐水性の高いユリア樹脂接着剤あるいはユリア・メラミン共縮合樹脂接着剤が使用されてきました。これらは 尿素やメラミンとホルムアルデヒドとの付加縮合によって生成する熱硬化性樹脂で、製品からのホルムアルデヒドの放散は基本的に避けられないものです。しかし、ホルムアルデヒドの放散を低減させることが緊急の課題となり、接着剤の調整、接着条件の改善により著しく低減した製品が製造されるようになりました。 1)現在、普通合板、構造用合板などについては日本農林規格(JAS)、パーティクルボード、MDFについては日本工業規格(JIS)が下記のように定めています。 合板についてみればF1、F2合板の認定工場が増え、需要に応えられる体制が整ってきており、材料の選定にあたってこれらの規格製品の利用が望まれます。 ホルムアルデヒド放散量* 2)表厚生省で組織された「快適で健康的な住宅に関する検討会議 住宅関連基準策定部会 化学物質小委員会」は平成9年6月、ホルムアルデヒドについて室内濃度指針値を「30分平均値で0.1mg/m3以下」と提案しています。この濃度は室温23℃の下で、世界保健機構(WHO)提案の約0.08ppmに相当します。これは規制を定めたものではなく、住宅の設計者、施工者が居住者の健康被害を低減するために目標とすべき濃度とされています。 3)上記規格の「水中濃度」と指針の「気中濃度」とは、測定法、単位が全く異なり、両者間の関連についてはまだ十分明らかにされているとはいえませんが、温度23℃、湿度45%の室内にF1合板(放散量0.4mg/m3)を貼り、換気量(m3/hr)と合板表面積(m2)との比が1m/hrとなる条件で、設置4~7日後における気中濃度が指針値にほぼ該当すると報告されています1)。 4)ホルムアルデヒドの気中濃度に影響する因子とその影響度合いについて、温度が10℃高くなると気中濃度は約2倍に、湿度が1 % 高くなると気中濃度は1% 増加するといわれており、ホルムアルデヒド臭が夏に特に問題になるのはこのためです。さらに、換気量が2倍になると気中濃度は約2/3に、材料表面積が2倍になると気中濃度は1.3~1.5倍になるといわれています。 5)建物の使用部位による室内の濃度への影響は、内装仕上げ材、内装下地材、床下・天井・構造躯体、外装材の順に小さくなります。また、表面を適切な塗料で塗装したり、他の材料で被覆したものについては、表面からのホルムアルデヒドの放散は上記規格表示区分の数値より少ないことが確認されています。表面に化粧単板を張り、ウレタン系樹脂の塗装をした複合フローリングなどはこの例です2)。 6)住宅の建設に当たって材料の選択が重要であることは言うまでもありませんが、ホルムアルデヒドの放散は時間の経過とともに低減するものであり、住宅新築時、一定期間十分換気することが気中濃度の低減に効果的です。入居時まで2週間程度の猶予期間をおくことが望ましいともいわれています。 7)住最近利用が急増している住宅の集成柱や集成梁・桁などの小・中断面構造用集成材は従来、接着剤として レゾルシノール樹脂接着剤を利用していました。これはフェノール樹脂接着剤とともに極めて高い耐久性を持ちますが、ユリア・メラミン樹脂接着剤と同系のホルムアルデヒドの付加縮合によるもので、ホルムアルデヒドの放散量は格段に少ないとはいえ皆無ではありません。一方、水性高分子ーイソシアネート系接着剤はホルムアルデヒドの無い接着剤として開発されたもので、作業性の面から使用が増加していましたが、最近のホルムアルデヒド放散問題に対応して全面的に取り入れられています。従って近い将来、ホルムアルデヒドの放散は全く問題ならなくなるものと思われます。 8)室内空気汚染の原因物質としてはホルムアルデヒドのほか、施工中の接着剤や塗料の溶剤などに利用されるトルエン、キシレン、さらに木材保存剤、可塑剤、防蟻剤が取り上げられており、これらによる空気汚染とその低減については下記の資料が大変参考になります。
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