製材木質建材の種類と特徴
製材
住宅の土台に使われている正角
製材とは素材(丸太・原木)を鋸挽きした木材製品で、「挽き材」ともいわれます。製材の大半は建築に使われますが、建築以外にも家具・建具、土木、輸送・梱包、造船、車両などで利用されています。
2000年に我が国で使われた製材は、約4,100万m3(丸太換算、以下同じ)で、このうち61%が国内の製材工場で生産され、残りは製品で輸入されたものです。国内生産の49%は輸入原木を使っているので、全体の69%近くが外材の製材ということになり、スギやヒノキなどの国産材は31%です。しかし、外材が支配的なのは都市部であって、地方市場では国産材主体もしくは中心となっているところも多く存在しています。
製材の日本農林規格(JAS)は1991年に大幅に改訂され、2002年に小改訂されました。それには製材のそれぞれの用途別に22品目が定められ、制定されています。「針葉樹の構造用製材の日本農林規格」では、針葉樹の構造用製材の等級、寸法、含水率が定められています。等級は目視と機械による方法に二大別され、目視では甲種(曲げ性能を重視する用途)と乙種(圧縮性能を重視する用途)ともに1級から3級までに、機械では1級から6級までに等級区分されます。目視による判定は節、丸身、年輪幅、割れなどによって、機械は曲げヤング率、丸身、割れなどによっています。含水率では、仕上げ材はSD15(15%以下)とSD20(20%以下)に、未仕上げ材はD15(15%以下)、D20(20%以下)、D25(25%)に区分されます。
JASではない慣習的な区分、材面に現れる節による区分も依然として存在しています。
針葉樹製材品の種類
住宅の梁に使われている平角
JASでは、製材品を針葉樹製材(構造用製材、造作用製材、下地用製材、枠組壁工法構造用製材)、広葉樹製材、耳付き板、押角、薄板、建具、キリ材に区分しています。しかし、平成8年度に廃止された「製材の日本農林規格」に規定されている板類、ひき割類、ひき角類の3材種(図1、表1)は、一般では、しばらくの間使われると思われますので、以下に説明します。
製材品の形状・寸法(製材種)
- 板類:厚さが7.5cm 未満で幅が厚さの4倍以上のものを指し、板、小幅板、斜面板、厚板の4種がありました。
- ひき割類:厚さが7.5cm 未満で幅が厚さの4倍未満のものを指し、小割と平割の2種がありました。
- ひき角類:厚さおよび幅が7.5cm 以上のものを指し、正角と平角の2種がありました。
また、一般製材の商取引では、JAS とは異なる慣習的な材種名が用いられています。
葉柄材(羽柄材、端柄材):たる木、ぬき、野地板、壁下地板などの小断面製材品の総称です。
針葉樹製材の材種別主要用途
板割:足場板など、板類の厚板に相当する製材品です。
小割材:ひき割のうち廻り縁、竿縁などたる木以下の小断面製材品の総称です。
太鼓材:丸太の2材面を平行に鋸挽きした製材品です。
半割・二つ割・三割:ひき割やひき角を1/2、1/3、の厚さに鋸挽きした製材品のことです。
大角・中角・小角:輸入製材品の角材で厚さが5インチ未満を小角、5~16インチを中角、18インチ以上を大角と称します。
グリーン材:未乾燥の製材品のことです。
SS材:人工乾燥材(KD材)のうち、プレーナやモルダで表面仕上げした製材品のことで、1材面仕上げのS1S 材から4材面仕上げのS4S 材までがあります。
針葉樹構造用製材品の種類
構造用製材の規定寸法
「針葉樹の構造用製材の日本農林規格」は、建築物の構造耐力上主要な部分に使用する針葉樹製材品を対象にしています。この規格でとりあげている構造材の寸法は、現在住宅建築用に広く流通しているものを選び出し、これに大型建築物にも対応できるような大断面のものを加えて、表のように 129種類に簡素化し、これを規定寸法としています。また、製材の種類は、これまでの一般製材のJASの板類、ひき割類、ひき角類という材種区分に代わって、強度性能を重視した「目視等級区分製材」と「機械等級区分製材」に大きく2分しています。
「目視等級区分材」は節、丸身等材の欠点を目視により測定して等級区分するものをいい、「機械等級区分製材」は機械によりヤング係数を測定して等級区分するものをいいます。
このうち目視等級区分材は、土台や大引き、根太、梁、桁、母屋、たる木などのように横使いされるために主として高い曲げ性能が求められるものを「甲種構造材」とし、その断面の大きさから「甲種構造材I」と「甲種構造材II」に分けています。また、柱や束などのように縦使いされるために主として圧縮性能が求められるもの「乙種構造材」としています。なお甲種構造材は、木口の短辺が36mm未満の材及び木口の短辺が36mm以上でかつ、長辺が90mm未満の材を「構造用I」とし、これを超える寸法の材を「構造用II」としています。
乾燥材については、含水率を25%、20%、15%の3水準に規定して、D25、D20、D15と表示することにしています。
針葉樹構造用製材品の品質基準
構造用製材のJAS製品
構造用製材の規格は、主として実大の強度試験値を基にして等級に応じて一定の強度性能を保証するようになっています。この場合の等級区分法には、目視によって節や丸身、割れ等の欠点の程度から判定する「目視等級区分法」と機械によってヤング係数を測定し、その値から強度を割当てる「機械等級区分法」の2通りがあります。
目視によって区分した等級は、構造計算をする場合の木材の強さ(許容応力度といいます)を定めた、建築基準法施行令の規定値を満たすようになっています。目視等級区分製材は横使い(主として曲げ、引っ張り応力をうける)される甲種構造材(木口断面によって、構造用Iと構造用IIに区分される)と、縦使い(主として圧縮応力を受ける)される乙種構造材に区分されますが、いずれも強度性能に影響を及ぼすのは節や断面欠損になる丸身のほか割れ、目まわり、繊維傾斜、腐れなどの欠点の程度です。このような各因子に限界値を設定し、材面を総合評価して表のように1~3の級別に格付けします。
構造用製材の規格(目視等級区分)
機械等級区分法では、強度と高い相関がある曲げヤング係数を機械を用いて測定し、その値から非破壊的に強度を推定して等級格付けします。ヤング係数を40×103kgf/cm2以上を、6等級に区分し、各等級を20×103kgf/cm2毎の中間値で示すことになっています。なお、ヤング係数によって強度が評価されても、利用上支障となる丸身や割れ、曲がり、腐朽、狂いなどの欠点は目視による判定も必要となりますので、規格では、目視等級区分の3級に相当する基準を具備していなければならないことになっています。
造作用製材
針葉樹の造作用製材(造作類)の品質基準(JAS)
造作用製材は、建築物の外から見える部分に使われますので、その見た目(化粧性)が重要視されます。針葉樹の造作用製材のJAS では、造作類、壁板類ともに、表に示すように、目視により「無節」、「上小節」、「小節」の3等級に分けています。造作用製材は、単に節の大きさだけでなく、丸身、腐朽、割れ、曲り、欠けや変色などの欠点の程度により総合的に等級格付けされます。等級の判定は、角類の場合は1材面ごとに、板類の場合は良面(欠点の程度の小さい面をいいます)で行われます。
造作類では含水率18%以下のものを乾燥材といい、壁板類では含水率20%以下のものを乾燥材といいます。乾燥材は、仕上げ材ではSD15(含水率15%以下)、SD18(含水率18%以下)、SD20(含水率20%以下)、未仕上げ材では同様にD15 、D18 、D20 と表示することにしています。
基準の壁板類では、造作用製材の曲げ強さおよび曲げヤング係数の低下がおおむね1割を越えない範囲であれば、インサイジングを欠点とみなしません。また、保存処理した壁板類は、性能により「保存処理K1」から「保存処理K5」までの5段階に区分して表示することになっており、併せて薬剤名か薬剤の記号も表示することになっています。
枠組壁工法構造用製材品の種類
枠組壁工法用製材
枠組壁工法構造用製材とは、「枠組壁工法構造用製材の日本農林規格」によると、枠組壁工法(ツーバイフォー工法)建築物の構造耐力上主要な部分に使用する材面に調整を施した(4面かんながけした)針葉樹の製材のことをいいますが、必ずしも加工面が一定の範囲であればかんながけをしなくてもよいことになっています。
枠組壁工法構造用製材のうち、たるきや根太など主として高い曲げ性能を必要とする部分に使用するものを甲種枠組材といい、甲種枠組材以外のものを乙種枠組材といいます。
また、「枠組壁工法構造用製材の日本農林規格」とは別に、製材の曲げヤング係数を測定する等級区分機により曲げ応力等級区分される枠組壁工法構造用製材(MSR 製材といいます)用に、「機械による曲げ応力等級区分を行う枠組壁工法構造用製材の日本農林規格」が施行されています。
なお、曲げ応力とは物体の形状を変えようとする曲げ外力に抵抗する物体内部に作用する力をいい、曲げ応力等級とは等級区分機によって枠組壁工法構造用製材の曲げヤング係数を測定して最大曲げ応力を求めて格付けする場合の等級のことをいいます。
枠組壁工法とはツーバイフォー工法とかプラットフォーム工法と一般に呼ばれている北米の木造住宅の建築工法のことで、枠組壁工法構造用製材は北米のディメンションランバーに相当します。
枠組壁工法構造用製材の寸法形式(JAS)
枠組壁工法構造用製材には、表に示すように11種類の寸法形式(インチ単位の公称断面寸法を表わしています)あり、それぞれに含水率が19%を越える「未乾燥材」と19%以下の「乾燥材」について規定寸法を規定しています。MSR 製材には、表の網掛け部分の6種類の寸法形式が規定されています。
枠組壁工法構造用製材品の品質基準
枠組壁工法構造用製材の品質基準(JAS)
枠組壁工法構造用製材のJAS では、節、丸身、貫通割れ、曲り、そりやその他の欠点の程度により、甲種枠組材を特級、1級、2級、3級の4段階の等級に、乙種枠組材をコンストラクション、スタンダード、ユーティリティの3段階の等級に区分しています(表1)。この等級区分は、北米におけるディメンションランバーの規格と基本的には共通していますので、輸入品現地格付け等級をほぼそのままJAS の等級に読みかえられるようになっています。
また、MRS 製材のJAS では、29種類の曲げ応力等級と17種類の引っ張り強度性能に区分しています。MSR 製材では、丸身や割れについては甲種枠組材の2級に相当する基準を満たしていなければなりません。
枠組壁工法構造用製材とMRS 製材では、含水率19%以下のものを乾燥材といい、含水率が19%を越えるものは未乾燥材となります。乾燥材、未乾燥材はそれぞれD、Gと表示することにしています。
枠組壁工法構造用製材とMRS 製材ともに、寸法の精度は、測定寸法から表示寸法を除した値が表4に掲げる数値以下でなければなりません。
製材の曲げ強さおよび曲げヤング係数の低下がおおむね1割を越えない範囲であれば、インサイジングを欠点とみなしません。また、保存処理した下地用製材は、造作用製材の壁板類と同様に、性能により「保存処理K1」から「保存処理K5」までの5段階に区分して表示することになっており、併せて薬剤名か薬剤の記号も表示することになっています。
プレカット材
機械プレカット部材
プレカットとは、広義には大工・工務店の作業場での加工も含みますが、一般的には工場に機械を設備して住宅部材を加工することを指します。
プレカット化は、従来までの大工技能者による手加工を工場で機械加工することによって、部材の加工精度を上げ、品質の安定化を図り、建築現場作業を軽減し、技能者不足の解消や工期の短縮などをねらいとしています。しかし、最近ではコンピュータ導入によって、単に部材加工の自動化にとどまらず、部材の標準化と品質管理、住宅の構造設計・施工管理など住宅生産のトータルシステムを図ることまで展開しつつあります。
プレカレット部材の加工工程
一方、部材のプレカット化は、製材品の高次加工を通して、その付加価値の向上や流通・販売の合理化、さらには木造住宅の需要促進を図る手段としても採用されてきています。
現在、軸組工法用部材のプレカット工場は全国に大小約700余を数え、年間約18万棟強の供給といわれています。これらの工場は、大手・中堅の住宅メーカーや地域ビルダーあるいは工務店など建築業が経営する場合と、木材の付加価値をねらいとした木材業型の工場、そして建築業、林材業などとの協業によるものがありますが、約60%は建築業型です。また工場での部材加工は、建築業型では構造材と造作材の両方を加工している場合が多いが、木材業型では構造材のみを加工しているのが一般的です。
構造材の加工は、土台、梁、桁、胴差し、母屋、棟木、土台火打、梁火打などの横架材と通し柱、管柱、小屋束などの垂直材が主体で、前者は継手、蟻仕口、ほぞ穴、欠き取り、座金ぼりなどの加工が多く、後者は穴加工や溝加工が主となります。また加工ラインは横架材と垂直材に分けるのが一般的ですし、墨付け作業を行うか否かで自動化の程度が大きく異なっています。